速度。

本日は稽古前にちょいと買い出しに行きました。
いつもは主に衣装と小道具担当の植木や春原を中心に他の面子に動いてもらっていますが、
今日は行きがけに寄れる場所なのであたくしも行ってまいりました。

そこであたくし、得をしました。
このような公の場に詳しいことは書くことは出来ませんが、
そこであたくしちょっとだけ、得をしちゃいました。
買い出しビギナーズラックです。
わはははは。お手柄です。


さて。ところで私は徒歩五分の場所に、徒歩五分で辿り着けない。
ぶりぶりむちむちさくさくと懸命に歩いているはずなのに、辿り着けない。

なんでなんだろう。
早歩きのつもりでも爺さんに抜かれたりする。急いでいるはずなのに婆さんに抜かれたりする。
つまり歩いている時自分だけ、時間軸がズレているのかもしれない。
或いは歩いている時自分だけ、逆行ベルトコンベアーに乗っているのかもしれない。

そして植木は歩くのが速い。時にとてつもなく速い。
普通に歩いているように見えるがしかし、私から見たら走る速度で、その後姿が遠ざかる。

だからきっとあれはほんとは、やっぱり走ってんじゃないだろか。
巧妙に歩いているように見せかけながら、実は密かに、走っているんじゃないだろか。
ああそうだ、そうに違いない。きっとそうに違いない。

或いはそうでないのであれば、少し宙に浮いているんだと思う。
目に見えないくらい少しだけ、宙に浮いてるんだと思う。

ああ、きっとそうだ。そうに違いない。そうでなければ、むしろおかしい。

…そしてそんな植木と二人並んで歩く時、私は普通に会話をしているふりをしながら、
実は密かに走っている。
巧妙に歩いているように見せかけながら、実は密かに、走っている。


ああ、今まで黙っていたけれど。…あたし、ほんとは走ってます。